2012年2月22日水曜日

フィリピン 介護生活を考える⑤ 人(介護士・メイド)その2

人(介護士・メイド)について書き始めましたが、今回では終りそうにありません。
フィリピン人介護者についての評価・所感は次回に回します。
今回は介護士の資格(資質)について書きたいと思います。



日本では、ホームヘルパーとか介護福祉士などの資格があるようですが、フィリピンで介護生活を送る上で、資格を持った人が必要なんてこと、一切感じたことありません。大体、そのような資格はなにを身につけるものなんでしょうね。調べる気もありませんから、知りません。下の世話の仕方とか?片麻痺の人の抱き起し方?認知症の人との会話の仕方とか?そこに何か学術的な、論理があるのですかな?まあ、もし、簡単な医療行為があるとすれば、それは資格が要るでしょうが。



介護する上で最も大切なこと。それは、 『心』 です。 
良い介護者とダメな介護者を分ける、決定的な違いは、『心』 が入っているかどうかです。



『フィリピン人は皆、天性の介護士だ』 といわれますが、大きくはあたっていると思います。当然、フィリピン人とひとくくりにして話すのは不適切ですが、素晴らしい介護者の資質を持ったひとは、どこにでもいると思います。 『心』 の入る人です。我が家で、働いてくれた介護者のなかでベスト4がいるのですが、共通しているのは、私の母のことを愛してくれたことです。 『情がうつる』 という表現が一番ピッタリです。



フィリピン人の一番良いところは、年寄りと子供に優しい、体にハンデを持った人に寛容といった特性だと思います。 私はこれを、『弱い者への優しい心』 だと思ってます。 


何故か。 彼ら自身が弱い存在だからです。 貧富の格差の凄まじいフィリピン。 大部分の庶民は、社会的に非常に弱い存在です。 明日をも知れぬ生活、万一の時の保障など何も無い。 そういう弱い立場のひとは、お互いが助け合わないと生きていけません。 弱い者は群れるのです。 野生動物でもそうです。 アフリカで、弱い草食動物は群れをつくります。 そして、弱い子供を群れの中央にに置いて皆で守ろうとします。 人間社会の群れの、最小最強単位が、ファミリーですね。




私の母は、 『年寄り・女性・体が不自由』 と、弱い者の条件が3拍子そろっています。 フィリピン人の介護者は、母に凄く同情の心を寄せてくれます。 そして、献身してくれます。 仕事としてやっているはずなのに、まるで、自分の母のように接して、心配して、母を助けようとしてくれます。 これは、私の実感です。 そのフィリピン人介護者の姿に、私が思わず目頭を熱くしたことは、2度や3度ではありません




エピソードをあげましょう。




《マジョリーおばさん》

母が胆石で3週間入院した時、介護者マジョリーは、3週間ほぼ、ぶっ続けで母の病室の長イスで過ごしました。 私が、付き添いを替わってやろうと申し出た時に、断られました(笑)。 彼女は私に、こう言いました。 『あなたが居ても、お母さんの下の世話を出来ないじゃないか。私がするから、家に帰りなさい』。 実の息子(私)、形無しですよ、本当。 そこに、特別手当をくれとか、そんな打算は一切無い。マジョリーは、手術室から生きて出てきた私の母をみて、顔をグシャグシャにして泣いていました。



《レンレンさん》

30台前半のこの女性。全く何故か分りませんが、私の母が大好きみたいでした。旦那さんもいるし、決してレズビアンじゃありません(笑)。 たまの休みの日、彼女は家に帰ったのですが、母のことが気になって気になって、何度もテキストが入ります。そして、彼女は言いました 『I MISS HER』。 普段、世話ばかり掛けられているのだから、たまの休みには、せいせいするのが普通じゃないでしょうか。 次の日、レンレンが帰ってきたとき、母に抱きついて、キスしていたのは言うまでもありません。



《バラット君》

30台後半男性。とても優しい男で、母とは大の仲良しでした。母が、バラット君のことを、『先生、先生』 と呼んで、とてもしたっていました。 どうも医者と勘違いしたみたいです(笑)。 ある日、バラット君が、何やらマッサージ機みたいなものを買ってきました。 電気信号が発信されて、神経に刺激を与え、麻痺をした手足の回復を図るものみたいです。 バラット君、寝ている母の手や足に、マッサージ機をあてがって、長い長い時間過ごしています。 嫁さんに聞くところによると、彼の月給の半分くらいの値段はするだろうとのこと。 私は支払を申し出たのですが、断られました。 勝手に買って来たものだし、効果があるかどうかわからないからと。



他にもいっぱいあるのですが、これで十分でしょう。
こんな奴らです。 至らぬ点や、まぬけなところ、駄目な習性、フィリピン人には目に見える欠点が、一杯一杯あると思います。でも、この 『心』 という目に見えない長所によって、補って余りあると感じています。



技術か理屈か、何を勉強するのか知りませんが、介護の資格なんて、全く要りません。



介護に『心』の入る人、すなわち、一級の介護士です。


※あくまでも、フィリピン人にはいい介護士の資質をもった人が多いという話です。当然、全部が全部というわけではありません。とんでもない奴も多いです。でも、全体として、フィリピン人は弱いものに優しく、天性の介護士である ということは、言ってもいいと思います。

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